SaaSで激変するソフトウェア・ビジネス ソフトウェア業界を揺るがす破壊的イノベーション
城田 真琴 著、毎日コミュニケーションズ
今更ながら、読んでみました。
本書と日本法人のホームページを見る限りではありますが、Salesforce.comはたしかにすごいですね。
高度なシステム運用技術によってロングテールのビジネスモデルを可能にしている。
さて以前記事に書いた、「SI費用縮減の圧力、でもSaaSってそんなに偉いのか?」の続きとして、費用縮減の圧力で疲弊しているSIサービス業のすべての代替の方向性について改めて考えてみよう。
自身がSaaSプラットフォームのプロバイダになるにはそれなりの技術と体制、すなわち初期投資が必要である。
既存SEにあたる「SaaSパートナー企業」は業界知識や業務内容に精通し、SaaSシステムの最適な利用方法を考え、またSaaSシステムと既存システムの連携などの実装を行うことになるが、これまで以上に、業務・IT技術ともに深い知識が必要となる。
たとえばApexコードなどはJavaに似ているといっても、「似ている」と「同じ」とは違う。Salesforce.comのサイトでみられるコード例を見ても、データベースアクセスに関する構文は全く独自のものであることが分かる。すなわちこれはニッチな言語系を新たに学習する必要があることを示している。つまりその技術者を確保するのには通常よりも高いコストがかかるということである。
一方、成果物の「量」は減少する方向になるだろう。
しかしこの状況下においても、→人月商売以上の単価を要求できる機会があるだろうか?。
また、SaaSのプラットフォーム上ででの追加アプリケーションを作成する方向に舵を切ることも考えられるが、ビジネスの規模はジリ貧になるだろう。
逆にいえば、アイデアがありSLAなどの課題をうまくクリアすれば、零細とか個人とかのレベルでも参入可能かもしれない。
SaaSはそのビジネスモデルゆえにユーザから見て安いサービスが提供され得るので、少なくとも数年は伸びると思える。
またITを道具と見て厳密な費用対効果を考えて、その対策としてもロジックや機能の再利用の促進を考えれば、SaaSはその流れに合致するものである。
一方で、技術的・運用レベル的に高度なSaaSプラットフォームを構築するには非常に高い技術力と体力が必要であるので、プラットフォームの寡占化が進むので、労働力の階層化をさらに進める要因でもある。
以下では、前著とSalesforce.com日本法人のホームページで得られる情報の範囲であるが気になった点を補足しておく。
●セキュリティについてはユーザ名・パスワードのクラッキングに対する対策が気になる。
意図的な漏洩やソーシャルエンジニアリングはとりあえず保留するとしても、インターネットのどこからもアクセスできるということは、ユーザ名とパスワードがわかってしまうと他人でもアクセスできてしまい、情報漏洩のリスクがあるのではないか?。
●SLAにおいて可用性の保証はあるか?
可用性の実績レベルでは、CRMシステムとしてはおそらく世界最強の部類と思われるが、保証されるかどうかは一応別の問題である。
マルチテナント(複数のユーザに対するサービスを1つのハードウェアリソースを共有して提供する)であるるからこそ、一部の不具合が全体に広がる可能性がある。
実際に2005年末に大規模なシステム停止があって各社の業務に影響が出たとのことである。
全く別のASPプロバイダで、根元のCiscoルータがダウンして全てのサービスが半日ほど停止したという話もある。このようなことも今後起こりえるということである。
●性能について
実際には、ユーザ自社内やインターネットに接続するネットワークプロバイダでのネットワーク性能のほうが問題になるのだろう。
●会社が潰れたり買収されたりしてサービス提供が停止されるリスク
●顧客情報の読込、更新等のアクセスへの監査は可能か?が不明
個人情報保護法対応など。Apexコードレベルでのカスタマイズは避けたい。
●バージョンアップのときにユーザ側で再検証が必要ないのは本当か?
かなり少なく済むとはいえるだろうが、以前使っていた機能の動作が変わることが全く無いとは言い切れない。
特にApexコードレベルでのカスタマイズを行った場合に心配だ。バージョンアップの際に言語レベルでの変更が無いとは言い切れない。
●データ構造が業務と合致するか
これは長くなるので別の記事(その3)にします。
●日本郵政や他の金融機関が導入を決定したことについて
「金融機関」という冠は割り引いて考える必要がある。口座情報の集中管理を行っているわけではなく一部の金融商品販売にかかわるCRMのみと思われる。
…結局CRMはコア業務ではないという皮肉か。
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